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“われもこう”の想い その69「発達支援室の秩父宿泊」

われもこうの花は小さい
だから誰も振り向かない
誰も気がつかない
でも、われもこうは
誰かのために 何かをしたいと
ずっと願ってる
私も、障がいのある彼らも
ただの人間
天使でも悪魔でもない
ただの人間
目立たない花だけど
力一杯咲き切りたい

令和5年8月30日 その69「発達支援室の秩父宿泊」

コロナ禍で、毎年、毎年秩父宿泊を楽しみにしている人たちの、あきらめきれない実施を望む声が今年も聞こえてきました。7月に入り、コロナの発症数が増えてきて、近隣の学校の学年閉鎖などもありましたが、感染症法上、5類になったこともあり、今年は実施の方向でいくことになりました。3年も間が空いたため、今まで続けて参加していたメンバーは、高等部を卒業してしまい、今年は殆どが新規メンバーです。今までは3泊4日で実施していたのですが、今回はまだ新型コロナウイルス感染症の影響があるので、2泊3日にして様子を見ることにしました。
2台の車に分乗し、練馬インターから関越自動車道で花園へ。まず和銅開珎の遺跡を訪ねました。708年に日本で初めて作られた、お金の材料である和銅が採れた場所です。この秩父から、馬に和銅を乗せて、毎日奈良まで運んだと言われています。お金の歴史については、彼らにもう少し社会的経験が増えてきたら、丁寧に説明したいと思います。
和銅遺跡に流れる自然の川で、無心に遊び出した彼らの姿に自然の中に身を置くことの大切さを感じました。

その後、『星音の湯』という温泉に向かいました。あかねの会で秩父に行く時は、必ずここを利用しています。浴衣や甚平を着られることも彼らの大きな楽しみになっています。

その後は、みんなでスーパーへ買い出しです。3日間の食材を購入して、みんなで自分たちの食べ物を作ります。この宿泊の大きな目的の一つが、自分たちの食べ物を自分たちで買い、作り、生活していく力を身につけていくことです。1日目の夕食は、カレーライスとサラダです。野菜を洗って、皮をむく、切るなどの仕事を分担して行いました。

できあがって、みんなでテラスで食事をしました。
後片付けもみんなで分担して行い、終わった人から日誌を記入して寝る準備に入りました。
一日目の就寝は 10時になりました。その後、利用者の人たちの様子についての記録、今後の課題について、深夜まで支援員で話し合いました。

2日目の朝は、7時起床ということにしてありましたが、早くから目を覚まして、みんなが動き出すまで様子をみている人がほとんどでした。朝食作りも、みんなでやりました。

2日目の朝食 (チーズトースト、目玉焼き、しめじと人参の炒め物、スイカのヨーグルトがけ、バナナ)

この日は、昼食用のおにぎりも自分たちで作ることにしているので、朝食が終わった後も、大忙しでした。三角おにぎりとまではいきませんが、何とか自力でおにぎりを握ることができました。お昼に自分で握ったおにぎりを食べている姿には、感動しました。ゆで卵は、支援員が作りましたが、高校生に、きゅうりを塩揉みして食べやすい大きさに切ってもらいました。塩加減も良くとてもおいしかったです。

浦山ダム

自分達で作ったおにぎりを持って、浦山ダムへ向かいました。ダムの役割と仕組みについての説明が、小学生向けに展示されていましたが、あまり関心を示す人はいませんでした。大きなダム湖・桜湖には、ちょっとビックリしていました。放水した水溜まりの色がまさにコバルトブルーで、緑豊かな木々に囲まれて、景色は最高でした。

その後、鍾乳洞に入りました。足場がかなり悪いのと、天井も低かったので心配しましたが、予想以上にみんな真剣に歩きました。所によっては手を引いたりすることもありましたが、自力で歩こうとする気持ちをみんな持ってがんばって歩き通しました。鍾乳洞に入る前に、名物のお店のかき氷の写真を見ていたので、かき氷を食べたい一心で、頑張ったのかもしれません。

かき氷を食べて元気が出て、星音の湯に入り、その後、夕食作りに励みました。2日目はクリームシチューに挑戦です。みんなで野菜を洗って皮をむき、一口大の大きさに切り揃え、炒めて煮る〜手順は昨日と同じなので、大分慣れた手つきでやれる人もいました。サラダ作りも分担して、1日目よりスムーズに進みました。テラスで涼風に吹かれながら食事をすると、昼間の暑さを忘れさせてくれます。片付け当番も自主的に手をあげ、分担してやりました。

その夜は、その後花火をやる予定だったので、いつもはすぐ畳にゴロっとしてしまう人も、少しソワソワと動いていました。火のついた花火を平気で人に向けてしまう人もいるので、目が離せませんが、花火のきれいさに、引き寄せられるように次々と花火に手を伸ばし、火をつけようとしていました。ろうそくではなかなか着火せず、小さな焚き火を起こしました。動物は、火を警戒するのに、人間は火の活用をして発展してきました。彼らも火を怖がることなく、花火に着火しようとがんばっていました。

3日目の朝、いよいよ家に帰れるという思いが強く、「今日、家に帰る」と何回も朝から言っている人、私が「もっと秩父に泊まっていこうよ」と言うと、とんでもないと言うように首を横に振り、「家に帰る」と繰り返し言っていました。
朝食作り、布団干し、大掃除をして10時20分に山の家を出発しました。途中、秩父華厳の滝に寄り、滝の涼に触れました。滝壺にどんどん近づいていく人もいました。本当に水が冷たくて気持ちよかったです。

その後、フォーレストというお店に寄り、昼食を食べました。予約していたので、特別室を取っておいてくださり、豪華な雰囲気の中での食事になりました。

高速道路では、事故渋滞もありましたが、30分遅れで春日町教室に到着。誰もケガせず、コロナにもかからず、元気に楽しい思い出を持って帰って来られたのが何よりでした。
でも、今後の彼らの人生を考えた時に、こういうことも、ああいうことも身につけておかなければ、親亡き後大変になるだろうなという想いが、大きくのしかかってきたのも事実です。
宿泊のまとめをきちんとして、一人一人の課題を明確にしてご家族にお伝えしようと、宿泊報告会を予定しています。今後の人生を見通して、スモールステップで、一人ひとりの課題を明確にし、どうやって「生きる力」を高めていくか?
その実践を積み重ねていかなければ、と楽しい思い出が交錯する中で決意を新たにしました。

吉田 由紀子

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