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“われもこう”の想い その42「個別言語指導の成果」

われもこうの花は小さい
だから誰も振り向かない
誰も気がつかない
でも、われもこうは
誰かのために 何かをしたいと
ずっと願ってる
私も、障がいのある彼らも
ただの人間
天使でも悪魔でもない
ただの人間
目立たない花だけど
力一杯咲き切りたい

令和4年6月16日 その42「個別言語指導の成果」

就労継続支援B型に通う人たちは、一般の企業就労は難しいが、福祉的見守りの就労は可能な人たちです。とはいえ、その幅は広く、1〜2年で企業就労できそうな人から、障がいが重くて会話が困難な人たちまで、いろいろな人たちがいます。日常会話が少しでも成立すると、お互いが助かるのでは?と思い、個別の言語指導を行なっています。

われもこうの想い7でも、その様子を書きましたが、成果はすぐ表れません。何年もかかり、少し発音がわかりやすくなったかな?色名がわかるようになり、いくつかの色名を言えるようになったという気の長い指導です。われもこうの想い7「言葉の大切さ」にも書いたFさんですが、数が10までわかるようになり、野菜スープ作りで大活躍できるようになりました。愛の手帳では2度と重度ですが、今では工賃が40数人の中で、トップから二番目という稼ぎ頭です。

そのFさんが、スープに入れる10種類の野菜の名称がわかり、自分でも言えるようになったら、一緒に働いている支援員や仲間たちも助かるだろうと思い、野菜の名称の指導を始めました。

野菜たっぷりスープ あかねの会製

ところが、Fさんは、自分で話せないどころか、その野菜が何なのかという「理解言語」も育っていないことがわかりました。まず、理解言語が育っていなければ、発語はあり得ません。これは長い戦いになると覚悟して取りかかりました。

理解言語〜言われた物がどれなのかわかるようにするために、二つの野菜のカードを選び、「ナスをください」「にんじんをください」を繰り返しました。色も全く違う物で始めました。Fさんは全く分からず、何か言われるたびに、2枚のカードを交互に手で触るだけでした。週に一回だけでは足りないのだと思い、支援室でも、毎日4時から5回ずつ取り組んでもらいましたが、2ヶ月たっても、できるようになりませんでした。

家でも実際の野菜を見せて、名称を言ってあげて下さいとお願いもしましたが、芳しい成果はあがりませんでした。色名や、身体名称、身の回りの物の名称は入り、ほぼ明瞭に発音できるようになったのに、野菜名は入りません。

こうやって指導に行き詰まった時、「まだ、10000回やっていない」と思うようにしています。最低でも「3000回」繰り返さなければ脳には定着しないと、我が子の難聴の療育で言われた言葉を思い出し取り組んでいますが、そう考えてみると、毎日、支援室で5回取り組んでも1ヶ月で100回程度です。週に一回の言語指導の分を加えても、40〜50回、2ヶ月で300回位しかやっていないことになります。

まだまだ、脳に定着させるまでの取り組みができている訳ではないと思い返し、取り組みました。 しかし、言葉で言われても、どうもピンとこないような彼の表情を見ていて、何か他の方法はないだろうか?と考えてみました。

毎回、今日の日にち、天気、自分の名前は書いていますが、音と文字がしっかり結びついているようには見えません。作業場面や普段の様子を見ていると、目で見た物は、しっかり捉えているようですが、言葉で言われたことを耳で聞いて理解していることは少ないようです。文字を音と一致して理解しているとはとても思えないのですが、試しにと、言葉で言うのと同時に文字カードを見せてみたら、何とほぼ100%正解できたのです!

 

視覚認知が高く、文字を見たら確実に「なす」「にんじん」とわかるということです。聴覚からの言葉だけで言われると、自信なく、視覚的手がかりがあると確実にわかるということがわかりました。

今後は、文字を見てわかる段階をたっぷり経験して、その次の段階として、文字カードがなくても、言葉だけでわかる段階に持っていきたいと考えています。その人その人の障がい特性に合わせた指導の工夫が、本当に大切なのだと改めて感じました。これからも、一人ひとりの特性をしっかり把握して、スモールステップの丁寧な支援ができる様、研修を深めていきたいと思います。

吉田 由紀子

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