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“われもこう”の想い その41「久々の秩父旅行」

われもこうの花は小さい
だから誰も振り向かない
誰も気がつかない
でも、われもこうは
誰かのために 何かをしたいと
ずっと願ってる
私も、障がいのある彼らも
ただの人間
天使でも悪魔でもない
ただの人間
目立たない花だけど
力一杯咲き切りたい

令和4年5月17日 その41「久々の秩父旅行」

コロナ禍が始まる2年前までは、5月のゴールデンウィークと、9月のシルバーウィークには、グループホーム入居の希望者と秩父山の家で過ごしていました。
コロナ禍となってからは、県をまたぐ移動も憚られ、大勢でワイワイガヤガヤと食事をしたり、入浴なども「ソーシャルディスタンス」を守るために、秩父に出かけることはできませんでした。やっと今年のゴールデンウィークは規制がなくなり、久しぶりに、11人の寮生と、3人の支援員で秩父に出かけました。車二台に分乗して出かけましたが、三連休の初日は、高速道路の大渋滞で、普段は花園まで40分ほどで着くのが、4時間もかかりました。車の中では、しりとりをしたり、窓の外に見える雲が何に見えるか?暖かい日差しを受けて、「暖かい物なぁに」などの会話を楽しみながら行きました。

高速を花園で降り、午後1時半過ぎ、カツ丼屋さんに辿り着き、お昼ご飯にありつきました。カツ定食に、みんなの嬉しそうな顔。

あっという間にカツだけ完食。

食べることは、最大の喜びの様です。秩父の山の家に辿り着いたのが3時になってしまいました。布団や毛布を外に干し、掃除をみんなでしました。普段の寮生活や日中活動で、あまり掃除をしていない人もいたのですが、ほうきを渡してみたら、意外にも上手に使いこなし、ゴミを集めてくれました。

山の家から近い温泉に出かけました。いつもはもっと早い時間に温泉に来ていたので、こんな遅い時間に来たのは初めてだったのですが、何と5時を過ぎると200円も安くなるということでした。全く知らずに渋滞で遅くなってしまったと思っていたのが、ラッキーでした。とはいえ、いつもの如く、男性軍は小一時間で出て、広間で寝そべって待っていましたが。

温泉の後、スーパーマーケットで三日分の食材を購入しました。三グループに分かれて、買い物を分担して効率よく済ませました。7時過ぎに山の家に帰って、布団をしまう人と夜の調理を手伝う人に分かれて動きました。Cさんが、男性なのにエプロンを身につけて台所に手伝いますと現れたのにはビックリしました。女性も、「何しますか」とやる気満々。クリームシチューとサラダを、14人分配膳が終わり、食べ始めたのが9時近くになってしまいました。大渋滞のため、仕方ないねーと、明日の朝は、少しのんびりと起きることにしました。

二日目は、秩父のミューズパークに行きました。丘の上の展望台から、武甲山と秩父の町が見渡せる場所があります。旅立ちの丘というところに最初行きました。秩父の影森中学校で生まれた「旅立ちの日に」の歌がずっと流れている場所で、ほとんどの人が中学校の卒業式で歌った歌なので懐かしく、皆で一緒に歌いました。

その後、ミューズパークを歩き、音楽堂まで行きました。野外音楽堂では、午後からコンサートがあるためか、リハーサルを舞台でやっていました。大変暑く、音楽堂の隣でかき氷を食べました。

そして、もう少しがんばって歩き、展望台に到着。秋には雲海も見えるとのこと、武甲山と秩父の街並みを眺めました。そこから駐車場までは山道で、最近入院して太ってしまったYさんが、歩くのが大変になってしまいました。私も右腕を痛めていたので、手を繋いであげるのも苦痛になり、Iさんに頼んでみたら、Yさんを引っ張って歩いてくれました。階段の所にくると、「気をつけてね」と優しく声をかけているのでビックリしました。日中活動の場では、生活介護にいて、誰かの面倒を見るなんて考えられず、いつもみてもらう側にいると思われていたIさんです。彼の普段は見られない素晴らしい面を見つけて、とても嬉しくなりました。他の人たちもその様子をよく見ていてくれていました。

夕食の時に、余ったオレンジ二切れを誰にあげようか話し合ってと投げかけたら、Iさんが頑張っていたから、あげたいという意見が出たのです。ビックリしました。他にも、調理を頑張っていたからRさんにあげたい、いやいや、みんなで更に切って食べようと、いろいろ意見が出たのですが、再度話し合ってもらい、結局、Iさんと、Rさんにあげようと、自分達で話し合って納得しました。そんな過程を見ていて、知的障がいがあっても、人のことを思いやる気持ちがこんなに育っている仲間たちに、私は改めて魅了されました。

朝食をテラスで食べていて、ウグイスが鳴いているのに、食べることに集中して誰もウグイスの声に気がつかない?思わず「ほら、ほらウグイスが鳴いているよ。感動してよ」と私が声をかけてしまう仲間たちですが。

三日目は、山の家の大そうじをして、山の家を後にしました。秩父大滝を見て、水潜寺に寄りました。

水潜寺では、お地蔵さんに、三度水をかけて拝むと願いが叶うと書かれていたのを見て、みんな順番に何やら真剣な顔をして拝んでいました。Iさんに、何を拝んだの?と聞いたら、「根性をたたき直して、毎日、きちんとあかねの会にサボらないで来られるように拝みました」と言ったのです!グループホームから家に帰ってしまうことが多く、家でお父さん、お母さんが説得しても、なかなか毎日支援室に来られず、ゲームばかりしていて、お家でも困っていたIさんです。

自分でも、本当は、きちんとやらなければとわかっていて、なかなか自分の欲求をコントロールできず、自分でも本当は、これではダメとわかっていたのだ!と、改めて彼の本心を知ることができました。思わず、「本当にわかってるね。応援しているよ。」「頑張って支援室に来られたら、又、みんなと秩父に来ようね」と言うと、嬉しそうに、Iさんは、「また、秩父に来たい」と言っていました。

連休後は、今の所以前とは違って、Iさんは毎日支援室に来ており、みんなと楽しそうに過ごしていると支援員から報告がありました。時々、日常から離れて、みんなとワイワイガヤガヤと一緒に食事したり、温泉に入ったりする楽しさは、生きていく上での大切なことであり、日常生活の原動力になるのだと改めて感じました。

早くコロナが終息して、みんなが秩父に行ったり、いろいろな所に出かけられる日常が戻ってほしいと、小さなわれもこうは、祈るような気持ちで日々を過ごしています。

吉田 由紀子

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