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“われもこう”の想い その60「信じて待つ」

われもこうの花は小さい
だから誰も振り向かない
誰も気がつかない
でも、われもこうは
誰かのために 何かをしたいと
ずっと願ってる
私も、障がいのある彼らも
ただの人間
天使でも悪魔でもない
ただの人間
目立たない花だけど
力一杯咲き切りたい

令和5年2月28日 その60「信じて待つ」

N君は小さい頃から、軽度の知的障がいに加えて、多動で怒りん坊君でした。
お母さんが、妹や犬のお世話をすると、自分の感情を抑えられなくて、罵詈雑言を吐くだけでなく、家の壁やドアを壊してしまう程でした。その頃から療育で関わっていたので、その都度お話しすると、私に対している時は感情コントロールできて外面はいいのですが、お家ではお母さんが一番の被害者になってしまっているようでした。
中学校は、寮のある私立の特別支援学校を選んだのですが、高校生になってからは、一旦家に帰ると寮には戻れなくなってしまい、家から通える特別支援学校に転校しました。その間のことは、「われもこうの想い9 音楽の持つ力」でも触れましたが、あかねの会の心の鐘コンサートで聴いた「愛の挨拶」を聴くと落ち着くと言って、私がピアノで弾くと、涙を浮かべながら聴いていました。
最悪の状態に陥り、精神病院に入院した時も、やっと面会できるようになりお母さんが面会に行った時、真っ暗な部屋で、愛の挨拶だけが聞こえてくると言っていたそうです。そういうN君のために、私はいつでもどこでも弾いてあげられるようになろうと、毎朝練習しました。

そのうち毎朝、N君が今日は穏やかでいられますようにと、祈りの気持ちで愛の挨拶を弾くようになりました。今年に入り、やはり家の中で感情コントロールができず、再度精神病院に入院した後、群馬県の施設に入所しました。5年後に感情コントロールできるようになって、成長してあかねの会のグループホームに戻ってきたいという希望を持って入所しました。
今度はそれまで気を張り詰めていた妹さんが、状態を崩したと聞いて、元気になる様にと本を送りました。

後日、お母さんから次の様なメールを頂きました。

吉田先生

おはようございます。
ご無沙汰しております。
優しいお手紙と素敵な本を2冊も送っていただきありがとうございました。
おかげさまで早速妹が夢中で読んでおります。私も読ませていただきます。

妹は受験生の夏休みでしたが、毎日起き上がることができないほどの頭痛でほぼベッドで寝て過ごしました。
Nが、引きこもっていた時のように、朝お弁当を作り、仕事の昼休みに一度帰宅して一緒に昼食を取る日々でした。
頭痛外来でMRIを撮りましたが異常はなく、今は心療内科に通っています。
このままだと朝起きれず学校も無理かと思いましたが、夏休み終わり頃から少しずつ良くなり学校が始まったら元気に行けるようになりました。頭痛も減りつつあります。

心が壊れるのは本当に怖いと感じました。
Nの時、信じて待つと吉田先生に教わった通り、何も話してくれないときはそっとそばにいて抱きしめていました。言葉は少なめに、信じて待ちました。

夏休みの最後の方で、ドライブに誘うと行くというので、
朝早くにまだ人のいない長瀞へ行きました。

流れる川を長い間静かに見ていました。
そして久々に笑顔がでてきました。

色々な思いが彼女の中にあると思います。
はっきりした原因は分かりませんが、受験のプレッシャーと、先生のおっしゃる通りNのこともあるかと思います。

先生がピアノに乗せてくださる祈りが通じたのでしょうね。夏休み終わりくらいから好転してきて、涙を流せるようになり、無気力だった顔が笑顔も出るようになりました。

吉田先生に親は焦らずに待つことを教わっていたので、妹は自分の足で戻ってこられたのだと思います。
Nが以前くれた手紙にこんなことが書いてありました↓

1.諦めないで最後までがんばる
2.ありがとうをわすれない
3.人に役に立つことがしたい
4.優しい自分でいたい
5.おんなのこに優しくしたい
6.父母妹犬を大切にしたい
7.気持ちは言葉で話す
8.おこらないでいたい
9.力仕事に取り掛かりたい
10.筋トレがしたい
11.むだづかいをしない
12.体を大切にする
13.ものにあたらない
14.イライラしないでやさしいことを考えたい
15.せわにんさんと職員さんの言うことを聞く
16.ごめんなさいはわすれない
17.ともだちとなかよくする
18.クレアのせいそうをしたい
19.太鼓がしたい
20.G-SHOCKがしゅみです
21.やさしくする
22.まますき

吉田先生から長時間かけて学んだことが、心に残っていたのがうれしかったです。
そして最後22番が一番うれしかったです。

今はイライラすることはないのかきくと、
それはあるけど、おこっても解決しないから、大人だから我慢すると言ってます。
あと、ついたち、ふつか、みっか、と言う言い方ができるようになったと誇らしげに話していました。
大人はそういう言い方をすると言っていました。

荒れていた時はすべて入らない気がしましたが、心には根付いていたことがわかり、嬉しいです。

吉田先生が信じる気持ちを教えてくださいました。
目の前ではとても信じられない光景だったとしても、何年か先に心には残っていることがわかりました。

Nの頃と変わらず、我が家は吉田先生の教えありきの生活です。

心より感謝申し上げます。
ありがとうございました。

また後日、返信を頂きました。

吉田先生

おはようございます。昨日仕事中で要件のみしか返信できませんでしたが、Nと関わってくださった方が涙を流してくださったと聞き私こそありがたくて涙が出ました。

毎日息を吸うのもつらくて、個別指導やお出かけをお願いしている時間だけがホッとできるときだったりしました。笑顔でNに接する気力もない日がたくさんありましたが、おでかけでリフレッシュしてきたNの笑顔に、こちらも笑顔に戻れたのが昨日のようです。みなさんにはたくさん歩かせてしまって、感謝しかありません。
吉田先生や支えてくださる方々のおかげで乗り越えられました。一人だったら思考も停止し、行き場を失っていたかと思います。
信じて待つことが大切だとと教えていただいた時、吉田先生の直己さんとの体験談が深く印象に残りました。待つのは歯痒いし、トンネルの先を抜けられるのかどうかもわからない、なんとも言えない暗くて不安な気持ちになります。
そんなときも、吉田先生が、「大丈夫!信じて待ちましょう」と、何度も何度も励ましてくださって、涙を流し、耐えられました。

障がいや、心に元気を無くしてしまった子を支える親たちにとって、吉田先生やあかねの会の方のように支えてくださる方がいるというのは、本当に命綱のような役割だと感じます。
親の心を元気にすれば子供は元気になる気がします。子供のことを思うほど、自分も一緒に落ちてしまいますが、、、、何度助けられたかと思います。私は吉田先生やあかねの会に出会えて本当にラッキーです。今苦しんでいる方々の心に、吉田先生のメッセージと、あかねの会のサポートで、明るい光が届けばいいなと思います。
トイレにあるあかねの日めくりカレンダーも我が家の大事なアイテムです!あのやわらかい字と、言葉は元気が出ます。


日めくりカレンダー

こんな言葉をお母さんが言える様になるとは思えない程、一時期はご家族で大変だったことを知っているので、少しホッとしました。
まだまだ、N君の成長を待ち、住み慣れた練馬に戻れる様になるためには時間がかかるでしょうが、一時期の大変さを知っているので、少し動き出したことに、ホッとすると共に、N君が戻ってきて、自立した生活を送ることができるまで見届けたいという気持ちです。
この経緯を他の親御さんに知って頂き、他の困っている親御さんの参考になればと思います。

「信じて待つ」
苦しい苦しい時を、信じて待ったから言える言葉です。

吉田 由紀子

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