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“われもこう”の想い その28「ホテルの心からのおもてなし」

われもこうの花は小さい
だから誰も振り向かない
誰も気がつかない
でも、われもこうは
誰かのために 何かをしたいと
ずっと願ってる
私も、障がいのある彼らも
ただの人間
天使でも悪魔でもない
ただの人間
目立たない花だけど
力一杯咲き切りたい

令和3年10月31日 その28「ホテルの心からのおもてなし」

今年も千葉の三井ガーデンホテルから、ハロウィンの飾り付けの依頼を受け、去年とはちょっと雰囲気の違う作品を飾り付けてきました。

その時、同行した支援員から、ホテルの対応に驚くと共に、対人接客の極意を知ることができたと聞きました。
飾りつけの作業を行っている時にS字フックが必要になり、ホテルにあるものをお借りできたらと総支配人に相談したところ、すぐにホテルの備品を確認してくれました。「探しましたが、今あるのはこのような物しかなく」とS字フックを2本貸してくださいました。その後しばらくして総支配人と男性スタッフの方が見え、「S字フックは足りますか。この者に近くにあるお店に買いに行かせます」と声をかけてくれました。結果として、近くのお店にはS字フックは売っていなかったようで、買い物から戻った後「申し訳ありません。近くのお店まで行ってきましたが売っておらず、ご用意することができませんでした。」とまた声をかけてくれました。ここまでして頂いただけでも本当にありがたかったのですが、更に驚くことがありました。「こんなもので宜しければお使いになりますか」と声をかけられると、総支配人の手には手作りのS字フックが握られていました。硬い針金を曲げて作られたそのS字フックをさらによく見ると、しっかりとテープが巻かれており、我々がケガをしないようにという配慮も施されていました。

作業も無事終わり、完了したことを報告すると「昨年とはまた違った印象ですね。」と感想を頂きその後に、「お時間が大丈夫でしたらお食事なさってください」と自然にラウンジまで案内していただきました。ラウンジにはカレーライスが用意されていました。勿論、皆喜んでカレーライスを頂きました。

考えてみれば、装飾を依頼した一業者に過ぎません。障がい者事業所ということで特別に考えて頂いたとしても、その全ての声かけ、挨拶が素晴らしく、今、テレビで話題になっている「マスカレード・ホテル」ようだと支援員が感動し、人に対する基本的姿勢として学ぶものが大きいと感じた、と報告がありました。

その話を聞き、対人サービスの仕事という意味では、私たち福祉の場も同じです。徹底したサービス精神というより、相手のことを心から考えて行動するという理念、それを実行するための社員教育の徹底、学ばなければならないことがたくさんあると気付かされました。

否、社員教育でどうのこうのという前に、仕事の枠を超えて、相手のことを思いやる気持ち、気遣いが育っていなければできないことではないか?と思わされてしまいます。
その人の生まれて以来の周りの人間のあり様や、子供の頃の教育によって違ってくるのでしょうか?

大人になって入職してから、足りない部分を社員教育で埋めていけるものなのでしょうか?
でも、障がいのある彼らに対しては、何歳になっても、諦めずに取り組んでいるのですから、職員なら尚更と思いますが、「もう、あの歳じゃね」と、五十歳を過ぎた職員の欠点は直せないと思っているような会話をよく耳にします。

人は、50歳を過ぎると、本当に変われないのでしょうか?
私が今向き合っている利用者達には、何歳になっても、万引きの癖を直してほしい、朝の行きしぶりをなおしてほしい、一生懸命に仕事に取り組んでほしい、と思いそのために、いろいろ工夫して、褒めたり、真剣に叱ったり‥という日々を過ごしています。

人が人を変えることはとてもエネルギーが必要ですが、工夫も必要、一番必要なのは「諦めない気持ち」でしょうか?

ホテルの社員教育に学びたいと、心から思わされた出来事でした。

吉田 由紀子

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