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“われもこう”の想い その120「田柄特別老人ホーム訪問」

われもこうの花は小さい
だから誰も振り向かない
誰も気がつかない
でも、われもこうは
誰かのために 何かをしたいと
ずっと願ってる
私も、障がいのある彼らも
ただの人間
天使でも悪魔でもない
ただの人間
目立たない花だけど
力一杯咲き切りたい

令和7年11月14日 その120「田柄特別老人ホーム訪問」

振り返れば、コロナ禍が始まった2020年から、感染の恐れからそれまで毎年、音楽クラブが、田柄老人ホームと和光市の福祉の里の訪問をしていたのが、できなくなって5年経ちます。
訪問できなくても、みんなの歌を届けようとビデオでみんなの歌を撮り、毎年送っていました。
でも、直接会えなくて、語ったり、歌ったりしたことに対しての反応がないという一方的な行為では、やっぱりやる気が生まれてこないのだと彼らを見て感じていました。
今年、毎年の敬老の日ではありませんでしたが、老人ホームの方の秋祭りに合わせて呼んで頂き、6年ぶりに老人ホームに伺いました。
午前中、あかねの会で、今日、歌う歌とメッセージの練習をしました。

昼食後、約2kmある老人ホームまで、全員で、歩いて行きました。

少しだけ秋らしくなった風を感じながら歩いて老人ホームに到着しました。
控え室も用意して頂き、小休止してから、いよいよ、皆さんが待っている部屋に並び、歌い始めました。
メッセージは、立候補して5人の人が、自分の思いや曲紹介などをしました。

「みなさん、こんにちは。おひさしぶりです。みなさん、お元気(げんき)ですか?
私たちは、あかねの会 音楽クラブです。最初にお送りする曲は、指揮者の、吉田由紀子が作詞した、あかねの会音楽クラブのオリジナル曲、『笑顔の輪』です。おききください。」

あかねの会のオリジナル曲も披露しましたが、秋の歌として「もみじ」「赤とんぼ」を歌った後、会場の皆さんと共に、「ふるさと」を歌いました。老人ホームの皆さんも、すごく大きな声で歌って下さいました。会場の皆さんと一体になった感じがしました。
最初の曲で、指揮をしている私の目に飛び込んだのは、Kさんの涙でした。Kさんは、自閉傾向があり、今まで自分の気持ちを言葉に出したことはありません。私はKさんを中学校で担任をしていたので、もう30年以上の付き合いなのに、彼の涙を一度も見たことがありません。歌いながら彼の目から大粒の涙が滴り落ちました。何を感じたのだろう?と思いながら、次の曲を指揮をしていたら、あちらでもこちらでも涙を浮かべている顔が見えました。

最後の曲では、男子パートを引っ張ってくれているSさんの両目も涙で潤んでしまいました。彼は、「最後には泣くかもしれない。やばいな。」と言っていたので、それでいいんだよと心の中で呟きながら、私は指揮を続けました。
振り返れば、今まで、老人ホームに歌いに来て、おじいさん、おばあさんのために、季節の歌を歌って、少しでも楽しんでもらおうと思っていたのが、彼らの方が、感あまって泣き出すことが多かったということを思い出しました。
「自分のおじいさん、おばあさんのことを思い出して、涙が出てきた」という女性のメンバーもいました。
直接、訪問して、お互いの姿を見ながら歌うということの大切さ、そのイメージする物は多少、ちがっても、共に同じ歌を歌うことで、共にこの場所で生きているという大切さを、改めて今回再認識しました。

「今日はありがとうございました。今日はちょっと蒸し暑いですが、だいぶ涼しくなってきました。次にまた私たちが来るまでお元気でいてください。それでは、さようなら。」

この言葉に、後期高齢者の仲間入りをしている私は、ズキンとしました。この自分でさえ、来年はここに来られるかどうかわからない‥。命には限界があることを、若い時より如実に感じているからかもしれません。限界のある命だからこそ、「今」「ここ」を大切にしなければと、改めて感じた一日でした。

家に着いたら、メンバーの一人からLINEが来ていました。

「吉田先生、お疲れ様です。
今日は少し緊張しましたが、メッセージを上手く読むことが出来ました。
また来年も行きたいです。
ありがとうございました。」

別のメンバーからもメールが来ていました。

「今日は、何年か振りの田柄老人ホームでした。おじいさん、おばあさん元気で良かったです。今回も感情?が強すぎましたが、頑張って歌いきりました。」

自分たちが、老人ホームの人たちのために、歌を届けようと思ったら、自分たちの方が、感動をもらい、大切な一日になった‥
毎年コンサートで練馬文化センター大ホールの何百人を前に歌う時は涙を流すメンバーなど一人もいないのに、身近でご老人と共に歌うことがこんなにも大きな感動をいただけるんだ・・・と感無量でした。正に「われもこうの想い」そのものだと感じました。

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