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“われもこう”の想い その102「グループホームで共に暮らす喜び② ~諦めない支援~」

われもこうの花は小さい
だから誰も振り向かない
誰も気がつかない
でも、われもこうは
誰かのために 何かをしたいと
ずっと願ってる
私も、障がいのある彼らも
ただの人間
天使でも悪魔でもない
ただの人間
目立たない花だけど
力一杯咲き切りたい

令和6年12月19日 その102「グループホームで共に暮らす喜び② ~諦めない支援~」

あかねの会が社会福祉法人化して、発達支援室(児童デイサービス)では、一才からの発達支援に関わるようになり、18歳以降の就労、福祉就労、更に親御さんの高齢化に伴いグループホームの必要性が増し、障がいのある人たちの一生涯にわたる関わりが必要になってきました。
「切れ目のない支援」「障がいがあっても、誰かのために役にたつ生き甲斐のある生き方」を目指し、活動を続けてきましたが、私自身が後期高齢に近づき、一昨年、理事長職を息子に交代し、我が家をグループホームにする準備に取りかかりました。
そして、去年の7月から、30代から50代の女性4人を寮生に迎え、グループホームの生活を始めました。
理事長職は、交代したものの、朝、夕のグループホームの仕事に加えて、日中活動の支援、発達支援なども引き続き行い、今まで以上の仕事を抱えることになりました。かなり目一杯でしたが、とにかくやらなければならないという思いに、引きずられて日々が過ぎていきました。
グループホームでは、朝、起きて仕事に出かける準備をすることも、スムーズにできない人がいて、その対応に追われていると、他の人の健康管理帳や連絡帳の確認や記入ができなくなります。洋服の裏表や前後を間違えて着ていて、きちんと着るまで声かけと見守りが必要だったり、食器の洗い方も雑で、汚れを洗い流さないまま洗いカゴに入れていく人もいたりするため、目が離せない状況でした。歯磨きも声かけしないとやらない、食器を洗うために、流しに運ぶ時、テーブルに必ず、小皿や箸置きを運び忘れ残してしまう、出かける準備を部屋のドアに絵と文字で書いて貼っておいて、確認しながら、忘れ物が無い様に声かけをしていきます。
朝、送り出すまでの戦いの様な時間が過ぎると一瞬、ホッとする間も無く、すぐ、日中活動の支援と、会全体の運営の仕事、個別の言語指導のために、就労支援室に出かける日々です。

土曜日も朝から、入室のためや、今後の支援のために、知能検査の予約が毎週土曜日の、午前、午後と入っています。検査をして、まとめて、その日のうちに親御さんに、お子さんの特性とどう言う関わり方をしたら良いかの相談にも乗るので、真剣勝負の4時過ぎまでの時間になります。夕方からは、余暇支援部の音楽や、スピーチクラブ、社会学習の活動が夜9時まで入っています。
グループホームの寮生は、一般就労が2名、A型就労支援が1名、B型就労支援が1名という構成なので、それぞれの見守り方、声かけの仕方も変わってきますが、その人の性格や、学習習得の偏り(視覚優位か、聴覚優位か、聴覚過敏やこだわりなど)を考えて、一人ひとり、理解できる言葉も違うので、伝わるように工夫をしていかなければなりません。
今、関わっている寮生は、女性特有の地図が苦手で、読めず、駅や、支援室までの道をなかなか覚えられない人が多いです。
入寮して、駅までの道を覚えられないAさん。1週間、駅まで一緒に歩きながら目印を教え、「最初の角を〇〇が見えたら右」「次の△△が見えたら左」と言いながら教えていきましたが、1週間経っても、後ろから見守っていたら、最初の角から反対方向に歩き出してしまっていました。

そこで、彼女は歌が好きなことを思い出して、歌にして伝えてみました。
「寮を出たら右♪ 次は〇〇が見えたら左♪♪
突き当たりまで行ったら右♪
次の〇〇が見えたら左♪」
と節をつけて歌にして、一緒に歌いながら歩いたら、「これなら覚えられる。おかげで覚えられた。ありがとう。」とニコニコして言ってくれました。それからは、間違えずに、一人で行けるようになりました。次の日も心配して後ろから見守っていたら、間違わずに行くことができるようになりました。
視覚認知の弱い彼女は、目印で覚えてもらうよりも、彼女のお得意な歌で聴覚から覚える方が入りやすかったようです。その後も、ニコニコしながら、歌にして口ずさんでいる姿をよく見かけます。
食器洗いが苦手なBさんも、目の前に、食器を洗う手順を文字と絵に書いて、確認しながら洗う様促しましたが、なかなか定着してくれません。やはり、Bさんも書いてある物を見ながらよりも、声に出して「なか ふち そと」と言いながら洗う方が合っているようでした。
しかし、一年以上、毎朝、毎夕食後の食器洗いを側について、一緒に「なか ふち そと」と言いながら洗っていますが、なかなか定着しません。言っている言葉と手の動きがずれてきてもお構いなしに洗ったつもりになっています。声かけをして確認していく必要がまだまだありますが、一年半、経っても定着しない状況に、何かもっと良い方法は無いものかと思い悩んでいます。
こんな薄紙を一枚ずつ積み重ねていくような日々で、一体、いつになったら普通にできる様になるのだろうかという気の遠くなる日々を送っていますが、目標を持ち、そこに向かって歩を進めているという実感はあります。
本人も「いつになったら、一人でできる様になるかな?」と言うようになってきました。
日常生活では、できることも少なく、どうやって一人でできる様にしていけるか?という工夫をしながら、ため息をつくことも多い日々ですが、やっと、朝、私から挨拶した時に、今まではブスッとしていたのが、「おはようございます」と返事を返してくれるようになった時の驚きと嬉しさ! その喜びを共に喜んでくれる他の寮生も嬉しそうな顔をしてくれます。何より、そんな時の私の顔を見て本人の不思議そうな、半分嬉しそうな顔が、「この人は絶対に変わる!」と思わせてくれます。

われもこうの想い103に続きます

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