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“われもこう”の想い その48「生きる力を育てる〜自立度評価とその育て方〜」

われもこうの花は小さい
だから誰も振り向かない
誰も気がつかない
でも、われもこうは
誰かのために 何かをしたいと
ずっと願ってる
私も、障がいのある彼らも
ただの人間
天使でも悪魔でもない
ただの人間
目立たない花だけど
力一杯咲き切りたい

令和4年9月28日 その48「生きる力を育てる〜自立度評価とその育て方〜」

障がいのある人たちが、何を身につければより自立した生活が送れるようになるかということを、やっと一冊の本にまとめることができました。20年ほど前から、項目ごとには印刷して、指導の手引き的にはまとめていたのですが、今回、集大成として一冊の本にしました。知的障害のある人たちが、親亡き後、地域で生きていくためには、何が身についていればいいのでしょうか?全117項目についてと、その具体的育て方、指導方法をまとめました。

親御さんは勿論、障がい者支援に取り組んでいる人間にとって、彼らが親亡き後、地域で生きていくには何が身についていればよいのか、ということは最大の課題です。私にとっても、特別支援学級の教員になってからも、あかねの会を始めてからも、これはいつも大きな課題でした。彼らに何を教えておけばいいのか?何から積み上げていけばいいのか?

最初は本当に何から手をつけるべきかもわからず、闇雲にできないことをとにかくできるようにしようと、手当たり次第に実践していたように思います。今、児童発達支援や放課後等デイサービスで、出会う子どもを持つ親御さんに、あかねの会の就労支援や、会社で就労している人たちの実態を是非知って頂き、何を育てておかなければならないかを知っておいて頂きたいと思います。

A子さんは愛の手帳4度で、よく話しもできるし、一人でバスや電車に乗って初めての所にも出かけられる力があるのに、毎朝、自分の髪の毛をきちんととけず、特に後ろはスズメの巣状態でした。

声をかけて、やり方を教えるとできるのですが、自分からはなかなかできず、毎朝声かけが必要です。手指の使い方が下手で、仕事も定着できず、あかねの会にやってきた30才過ぎの時、ちょうちょ結びもできない状態でした。定型のやり方で教えてできるようにはなりましたが、いろいろな手仕事がうまくできません。安全ピンも留められず、名札もすぐ無くしてしまいました。特殊教育歴は全くなく、通常学級で勉強に何とかついていくことに時間を費やしたようです。手指機能を育てようと、周りの人たちは思わなかったとしか考えられません。ある程度の漢字混じりの文章の読み書きはできるけど、手作業は殆どできず、就労が続きませんでした。30代半ばから、あかねの会でいろいろ教えてきました。一つ一つはできるようになるのですが、習慣がつかず、自力でできる状態にはなりませんでした。

彼らが大人になった時、どんな仕事につけるのか、ある程度想定して、それに必要な力をつけてあげなければ、A子さんのように、障がいの程度は軽く本来の力はあるのに、就労できず50代を迎えてしまう人もいます。

IQ:知的能力よりも、LQ:生活能力を上げる大切さを知って頂き実践をして頂きたいと思い、この本をまとめました。私の50年に渡る知的障がいの人たちとの関わりの中で、何を身につけておくべきかをまとめた本です。大項目15、小項目117にまとめました。こんなにやらなければならないのかと驚かれると思いますが、卒業生の実態から、彼らがこの必要性を証明してくれています。

人によって得意、不得意もあります。全部完璧にできなくても構わないのです。でも、生活をしていく上で必要なことを教える側がわかっている必要性があります。子孫に何を伝えていかなければならないかを自覚しているのと、全く自覚していないのとでは、大きな差が出てきます。

親指が対峙して使えていない例

お箸や食器の持ち方を、今の日本人の多くが、親から伝えられないまま、ひどい状況になっていると私は憂いています。手指機能の低下につながっていくと思われるのに、親が正しい箸や食器の持ち方を教えられない状態に陥っていると思わざるを得ません。そして、ゲーム機の操作でしか手を動かさなくなっている子供が大人になった時に手仕事がうまくできるのでしょうか?

親指を他の4指と向かい合わせて挟むと言う動作、霊長類故に獲得した能力が、今、獲得できずに手指機能が劣化した人間が増えて、人類が営々と築き上げてきた文化を引き継いでいけるのでしょうか?

親指がしっかり使えていない例

実際にグループホームから自立して生活しできている人の自立と評価とプロフィールも載せてあります。

当然、完全満点でなくても大丈夫です。苦手なこと、不得意なこと、それぞれあるから、ある程度できていれば、自立した生活も可能であると言う目安になると思います。是非、具体的に何を身につけていけば良いのか、この本を使って、今の状態をしっかり捉えて、我が子には、今これが必要という目安を持って、子育てにあたって頂く時にこの本がお役に立てればうれしいです。

吉田 由紀子

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